レース分析@2015TexasRelays

2年前の今日(日本時間:2015年3月29日),男子100mの桐生祥秀選手(東洋大)が追い風参考記録ながら,9秒87(追い風3.3m/s)をマークした.そのレース分析結果をお伝えする.分析に用いた映像は,YouTubeチャンネルのnyadesojが作成・公開したもの(nyadesoj,2015)である.映像は,毎秒59.94フレームのレートであった.

映像の目視(コマ送り)により,桐生祥秀選手が100m走中の30m地点(100mHの第3ハードル設置地点),60m地点(400mHの第10ハードル設置地点),90m地点(4×400mRのバトンパスゾーン入口地点),およびゴール地点を示すマークを通過する時点を判定した.そして,先行研究(宮代ほか,2013)と同様の手順により,0-30m区間,30-60m区間,60-90m区間のタイム,ステップ数を算出した後,平均疾走スピード,平均ピッチ(ステップ頻度),平均ストライド(ステップ長)も算出した.

分析結果

参考のために,2013年の織田記念・予選で10秒01(+0.9)をマークした際のレース分析結果も示した.

追い風0.9m/sでマークされた10秒01と,追い風3.3m/sでマークされた9秒87は,風速と記録との関係を検証した近年の研究(Linthorne,1994;Mureika,2001;Ward-Smith,1999)によれば,それぞれ無風条件の10秒06,10秒03に相当する.したがって,両タイムの「風速条件を考慮した(理論的)価値」に大した違いはないと捉えられる.

レースの中身については興味深いことに,今回分析した9秒87のレースにおける0-30m区間のタイム(3秒88)は,10秒01のレースにおける0-30m区間のタイム(3秒83)よりも長かった.
その他の区間のタイムについては9秒87のレースの方が短かった.すなわち,単純には9秒87のレースは10秒01のレースと比較して“後半型”であったといえる.なぜ“後半型”になったのかについて等,考察すべき点については多々あるが,考察については読者にお任せしたい.

なお,今回実施した方法による分析結果は,学術研究の査読審査をクリアするような精度を保証したものではない.大きな要因は,桐生選手による60m地点を除く各地点の通過の判定が,斜め前方(30m地点)もしくは斜め後方(90m地点,ゴール地点)の度合いが大きい映像によることである.それでも,多数のレース分析を経験した筆者は,今回のレース分析結果は価値があるものと考えている.

今後も,可能な限り精度を高めて,スポーツ競技資料を報道していきたい.

文献
①Linthorne, N. P. (1994) The effect of wind on 100-m sprint times. Journal of Applied Biomechanics, 10: 110―131.
②宮代賢治・山元康平・内藤 景・谷川 聡・西嶋尚彦(2013)男子100m走における身長別モデルステップ変数.スプリント研究,22:57―76.
③Mureika, J. R. (2001) A realistic quasi-physical model of the 100 m dash. Canadian Journal of Physics, 79: 697―713.
④nyadesoj(2015)https://www.youtube.com/watch?v=oGhF1STB3mI, (accessed 2017-03-30)
⑤谷川 聡・内藤 景(2015)スプリント・ハードルトレーニングのためのバイオメカニクス知見の活かし方.バイオメカニクス研究,18 (3): 157―169.
⑥Ward-Smith, A. J. (1999) New insights into the effect of wind assistance on sprinting performance. Journal of Sports Sciences, 17: 325―334.

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