陸上競技の風速条件に関する競技規則

陸上競技(屋外)では,200mまでのトラック競技種目(オリンピック種目では,100m,200m,110mH,100mH),走幅跳,および三段跳の記録は,追風2.0m/sを超える風速条件で測定された場合には,公認されない(競技規則第163条8.~13.参照,国際陸上競技連盟(IAAF),online日本陸上競技連盟,online).

この競技規則は,1936年の国際陸上競技連盟(以下,IAAFとする)の総会において承認されたことにより,成立した.

文献(Ward-Smith,1985)によれば,風の影響についてIAAF総会において議題として最初に取り上げられたのは,1930年のことであった.

そこでは,記録委員会が追い風の効果について検証することが決定し,1936年のIAAF総会においてその報告書が提出された.

報告書には,多様な競技レベルの男女スプリンターを対象にして様々な風速条件下における100m走の実験結果が記載された.

主な結果として,様々な風速値の追い風で測定された100m走の記録と向かい風で測定された100m走の記録との差が,平均して0.4s異なったことが示された(Ward-Smith,1985).

また,その報告書では,風速による記録の短縮が0.1sを超えないように,公認記録となる風速条件は,追い風1.0m/sまでにする必要があると結論付けられた(Linthorne,1994;Ward-Smith,1985).

というのは,当時の100m走の記録が,0.1s単位の手動計時によるものであったためである.

議論の末,実際には上記の通り追い風2.0m/sまでを公認記録の条件として承認され,これが競技規則として1936年に成立し(Linthorne,1994;Ward-Smith,1985),今日まで継続している.

すなわち,今日まで続く風速に関する規則は,80年以上前に挙がった問題(:強い追い風によって,0.1秒単位で手動計測する記録が不当に高められている)に応じたものである.

この競技規則が,改正か否かに関わらず,2017年である今日に合ったものであるかどうかを議論をしてもいいのではないかと,筆者は考えている.

ところで,全日本陸上競技連盟(現,日本陸上競技連盟)は1936年当時,日本国内の公認記録については,この(国際)競技規則の適用を見送っている.

もちろん,IAAFに公認記録申請する際には,追い風2.0m/sを超えた記録については申請対象から除外している.

国内公認記録のための風速条件の許容範囲は,1937年から1954年までの期間では追い風5.0m/sまでであり,1955年から1959年までの期間では追い風3.5m/s未満までであった(川田ほか,1995).

1960年には,追い風2.0m/s「以上」の風速条件による記録を参考扱いとする規則が一時成立し,1961年まで継続した.

現在のように,追風2.0m/sまでの記録が国内公認記録となるという国内競技規則が成立するのは1962年以降であった.

以上のように,風速に関する国内競技規則は成立した.

今後,風速と100m走の記録との関係についても,このサイトで取り上げていきたい.

文献

①川田清八・井上有美・野崎忠信(1995)競技規則の主な修改正.日本陸上競技連盟七十年史.ベースボール・マガジン社,pp. 535―553.

②国際陸上競技連盟(online)IAAF Conpetition Rules 2016-2017. http://www.iaaf.org/download/download?filename=fa556b18-c75f-4b3d-b952-7348645bccb5.pdf&urlslug=IAAF%20Competition%20Rules%202016-2017%2C%20in%20force%20from%201%20November%202015, (参照日2017年4月4日)

③Linthorne, N. P. (1994) The effect of wind on 100-m sprint times. Journal of Applied Biomechanics, 10: 110―131.

④日本陸上競技連盟(online)陸上競技ルールブック2017.http://www.jaaf.or.jp/athlete/rule/pdf/15.pdf, (参照日2017年4月4日).

⑤Ward-Smith, A. J. (1985) A mathematical analysis of the influence of adverse and favourable winds on sprinting. Journal of Biomechanics, 18 (5): 351―357.

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